昨年11月の東京映画祭を皮切りに映画『不都合な真実2:放置された地球』が上映されています。私も年が明けてからですが、映画館に足を運びました。グリーンランドの氷河が爆発するように溶け、マイアミの道路が海面上昇で冠水し、巨大な台風やハリケーンの襲来に見舞われる世界各地の映像がショッキングです。カメラは元米国副大統領アル・ゴアの気候危機を防ぐ活動を追いかますが、改めて、気候危機の回避にとって画期的な「パリ協定」が、パリのテロの悲劇の直後に、国連気候変動枠組条約第21回締結国会議(COP21)に集まった世界の首脳たちの高い志の表明の結果として成立したことを思い起こしました。

この映画は、2006年に映画『不都合な真実』がアカデミー賞を受賞し、翌年アル・ゴアが気候変動による危険に関する情報を世界に提供したとしてノーベル賞を受賞した後も、10年間不都合な真実は放置されたと告発しています。2016年11月にパリ協定が発効し、2017年11月にはドイツのボンでCOP23が開催されました。しかし、2017年6月には米国のトランプ大統領がパリ協定離脱を宣言しました。

不都合な真実を放置しないためには何をしなければならないかを考えるために、COP23の結果と国内の温暖化対策の動向について、整理しておきたいと思います。

 

国連気候変動フィジー/ボン会議(COP23)

昨年末の12月18日に、CAN-Japanによる「国連気候変動フィジー/ボン会議(COP23)報告会in東京」が行われました。ここでは、その報告内容やいただいた資料を基に、COP23の概要を整理します。ちなみに、CAN-Japanは気候変動問題に取り組む、120カ国以上約1100の環境NGOからなる国際ネットワーク組織Climate Action Network(CAN)の日本拠点です。

CAN-Japan報告会

CAN-Japanによる「国連気候変動フィジー/ボン 会議(COP23)報告会in東京」

 

まず、2015年から2020年の交渉スケジュールの中でのCOP23の位置づけは次のようになります。

【COPでの交渉スケジュール】

  • 2015年COP21 パリ協定の採択
  • 2016年COP22 パリ協定の発効
  • 2017年COP23 パリ協定の実施指針策定に向けた交渉
  • 2018年COP24 パリ協定の実施指針の完成
  • 2020年COP25 パリ協定の実施へ

 

COP23は、フィジーを議長国として、ドイツのボンで開催されました。このボン会議では、パリ協定の実施指針、すなわちルールブックの交渉の土台となる文書の作成が行われました。また、2018年に行われる世界の気候変動対策の進捗状況をチェックする促進的対話(タラノワ対話)の進め方や2020年までの行動の引き上げのプロセスなどについて合意しました。

ところで、気候変動に関する国連交渉はどのように行われるのでしょう。外務省のホームページに気候変動交渉に係る様々な枠組みについて,それがパリ協定以前と以後でどのように変容したかを説明する図がありましたので引用します。

 

気候変動国連交渉の構造

出典:外務省ホームページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/kiko/cop_sb_index.html

 

各会議体の概要は下記のとおりで、COP23においては、図の右側の〈2016年以降の構造〉にある各会議体で、議論が行われました。

(1)気候変動枠組条約締約国会議(COP)

気候変動枠組条約における最高意思決定機関です。全ての条約締約国が参加し,条約の実施に関するレビューや各種決定を行います。年に1回開催されます。

(2)京都議定書締約国会合(CMP)

京都議定書に関する締約国会合です。全ての議定書締約国が参加し,議定書の実施に関するレビューや各種決定を行います。年に1回開催されます。

(3)パリ協定締約国会合(CMA)

パリ協定に関する締約国会合です。全ての協定締約国が参加し,協定の実施に関するレビューや各種決定を行います。年に1回開催されます。

(4)補助機関会合(SB)

「科学上及び技術上の助言に関する補助機関」(SBSTA)並びに「実施に関する補助機関」(SBI)の2つの補助機関の会合です。SBSTAは条約及び議定書に関し,科学上及び技術上の情報及び助言を提供し,SBIは条約及び議定書の効果的な実施を評価及びレビューします。年に2回開催されます。

(5)パリ協定特別作業部会(APA)

パリ協定の採択を受けて,協定の発効及びパリ協定第1回締約国会合の準備のために設立された補助機関です。協定の実施のための指針等の策定等について協議されます。原則として,年に2回開催されます。

(6)強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)

ADPは,1.全ての国に適用される2020年以降の新しい枠組み,また2.2020年までの緩和の野心の向上について議論を行うために設置された補助機関です。パリ協定を採択した2015年末のCOP21において,その活動を終了しました。

 

ゆっくり進むルールブックづくり

パリ協定は2015年に採択され、2016年に発行しましたが、その実施のためには詳細なルールづくりが必要であり、これを2018年のCOP24までに合意することになっています。そのための作業が今回のボン会議のAPAで行われました。

APAでは、次の議題項目毎に共同ファシリテーターの進行のもと非公式協議が行われ、各国の意見をもとに非公式文書をアップデートする作業が重ねられました。

 

  •  議題項目3:緩和
  •  議題項目4:適応
  •  議題項目5:透明性
  •  議題項目6:グローバル・ストックテイク (GST)
  •  議題項目7:実施の促進と遵守の推進
  •  議題項目8:その他の議題

 

それぞれの議題項目毎にまとめられた非公式文書は、最終的にAPAの結論文書に「附属書」として公式に添えられ、各国共通の今後の交渉の土台として用いられることになります。

今後は、2018年のCOP24でのルールブックの合意をめざして、これまでに各国が表明した意見をもとに、どのテキストを残し、どのテキストを削るべきかという作業を通じてオプションを整理した交渉文書を作るという実質的な交渉モードに入ることになります。時間の猶予はなく、作業をより一層加速させる必要があります。

促進的対話(タラノア対話)の設計

現在の各国が掲げる温室効果ガス排出削減目標・行動の効果を全て足し合わせたとしても、パリ協定がめざす1.5~2℃未満という目標には全く届きません。いかにして世界各国の排出削減努力や、途上国における対策を進めるための支援を強化していくかが極めて重要な課題となっています。

そのため、パリ協定では2023年から5年毎に「グローバル・ストックテイク」と呼ばれる機会を持つこととされています。ここでは、世界全体の気候変動対策の進捗確認を行い、更なる目標や行動の引き上げにつなげることが意図されています。

COP21パリ会議では、2018年にも「促進的対話(facilitative dialogue)」を開催し、各国の排出削減目標を引き上げる機会にすることで合意がなされました。今回のボン会議では、促進的対話の進め方については、「タラノア対話のアプローチ」で、これを2018年1月から開始することで合意されました。

「タラノア」とは、COP23議長国であるフィジーの伝統で、包括的(inclusive)で、参加型で、透明な対話のアプローチのことです。タラノア対話は、(1)我々はどこにいるのか?(2)我々はどこに行きたいのか?(3)どのようにそこに行くのか?の3つの質問で構成。排出削減対策や支援の拡大を促進するようなあり方で進められることになりました。

また、タラノア対話では、「準備フェーズ」と「政治フェーズ」の2つの段階を設定し、COP23議長国のフィジーとCOP24議長国のポーランドが共同でこれらの2つの段階を主導し、COP24での政治フェーズでは、両議長が共同議長を務めることになりました。

しっかりとした証拠に基づく土台を築くことをめざして準備フェーズは2018年1月から始められ、COP24で終了します。締約国や、締約国以外のステークホルダーは、地域、国、国際レベルでのイベントを開催し、このタラノア対話をサポートし、関連する有用なインプットを準備するよう招請されるとしています。

政治フェーズは、閣僚級の各国政府代表が集まり、パリ協定のめざす1.5~2℃未満という長期目標に照らして、世界全体の気候変動対策の進捗をチェックするとともに、各国の国別目標(NDC)の準備に活かすもので、各国の閣僚の参加を得て、COP24で開催されることになりました。

タラノア対話へのインプットとしては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年に発行する「気温上昇1.5℃シナリオに関する特別報告」があります。また、締約国、ステークホルダーや専門家には、5月の会合への議論のために、2018年4月2日までに、政策に関連する分析を用意し、インプットを提出することが奨励されています。さらに、タラノア対話に関するオンライン・プラットフォームが作られ、ここでタラノア対話への全てのインプットを閲覧できるようになります。

タラノア対話が成果をあげるためには、各国政府がその趣旨に沿って様々な主体による分析を真摯に受け止め、自国の貢献をいかに引き上げるかを検討する姿勢をもつか否かにかかっています。2018年は、タラノア対話が実施されるという意味からも、非常に重要な1年になっていきます。

 

途上国が求めた2020年までの取組強化

COP23の直前にサウジアラビアなど途上国から「2020年までの取組強化」の議題項目の追加提案がありました。この背景には途上国の不満があります。

ひとつは、そもそも温暖化対策は、先進国が対策を先導する約束であったはずなのに、先進国の2020年までの削減努力が足りていないことです。それにもかかわらず、パリ協定のルールブックやタラノア対話を中心とする「2020年以降」に議論の焦点が移っていこうとしていることへの不満です。

もうひとつは、資金支援が明らかに不足しそうであることです。過去の合意で、公的資金・民間資金を合わせて、先進国から途上国に2020年までに1000億ドルの資金を動員するという約束がありましたが、これが米国のパリ協定離脱宣言もあり、不確実性が増しているということです。

パリ協定は、「先進国と途上国」の二分論から「全ての国々が努力する」という方向への進展を意味するものですが、そもそも前提となっていた「先進国がまず頑張る」という約束が果たされていないという不満が、ここにきて再度噴出した形になりました。

しかし、2018年と2019年において見直しを行う場が設定されたことで、ひとまずこの問題については全ての国々の合意ができました。

 

トランプ政権のパリ協定離脱の影響

WWFジャパンは、トランプ大統領のパリ協定離脱のCOP23の影響について、次のように報告しています。

* * * *

トランプ大統領は、2016年6月にパリ協定離脱を表明しましたが、実は、アメリカは2020年の11月4日までは、パリ協定の締約国(参加国)です。というのは、アメリカはすでにオバマ大統領下でパリ協定を批准しており、その後パリ協定は2016年11月4日に発効しました。そのため締約国であるアメリカは、3年間は脱退できず、しかも脱退の意思を正式に通告してから1年後に脱退と定められているため、脱退が可能となるのは、最短でも2020年11月4日以降となるのです。ちなみにこの日は次の大統領選挙投票日の翌日であるため、次の大統領次第でパリ協定を離脱しない可能性もあります。いずれにしても、アメリカはパリ協定の締約国としてルール作りには参画すると表明しています。

実際にCOP23では、アメリカ代表団は、オバマ政権下で、パリ協定成立に力を尽くしたアメリカ政府代表団と顔ぶれもあまり変わっておらず、今までよりも目立たないものの、交渉姿勢に変化はなく、建設的に議論に参加していました。トランプ政権下においても、政治的にはともかく、パリ協定のルール作りの議論には関与する姿勢が見られました。

また、トランプの離脱表明に対抗して、アメリカ国内の州政府、都市、大学、企業の2500を超える主体が「我々はパリ協定の中にいる(We Are Still In)」というイニシアティブを立ち上げており、COP23会場の隣に大きなパビリオンを設立して、州知事や企業リーダーが100人近く終結して「連邦政府だけがアメリカではない。実際のアメリカのリーダーたちはパリ協定の目標を達成していく」と次々と決意を表明しました。

この「我々はパリ協定の中にいる(We Are Still In)」に参加する州政府などの人口とGDPは、アメリカの50%を超える規模となっており、排出量で見るならば、なんと世界第4位ものスケールになります。日本一国よりも大きい規模なのです。これだけの規模の集合体が、COP23に参加してパリ協定を守っていくと表明することは、他の国々にとっても大きな安心材料となっていることは間違いありません。

「トランプ政権は一過性のもの」と言う冷静な声も多くの交渉官から聞かれ、脱炭素へ向かう今後の世界経済のルールを決める場であるCOP23において、約200か国はしのぎを削ってルール作りの交渉に臨んでいました。

* * * *

確かに米国のパリ条約からの離脱は、温室効果ガス削減の面でも、途上国での対策支援資金面でも脅威です。しかし、米国のよいところは、トランプ大統領の意思を忖度するのではなく、理不尽な決定に対しては対抗する力が機能するところです。トランプ大統領と100%と同じと宣言する人が総理大臣を務めるわが国も、理不尽にはきちんと対抗する心構えと姿勢を見習わねばなりません。

 

日米はまた「化石賞」を受賞

COP23では、日本が米国と一緒に11月6日に発表した「日米戦略エネルギー・パートナーシップ(JUSEP)」において、2017-18年に優先的に原子力技術や石炭技術を進めるとしたことに対して、気候変動交渉・対策において最も足を引っ張った国に贈られる不名誉な「本日の化石賞」を受賞しました。残念ながら最近のCOPで日本は「化石賞」の常連になっています。

フクシマの事故処理に、そして北朝鮮のミサイル問題という核拡散の脅威に悩まされている最中に、原発の推進を図るのはまさに理不尽です。

また、石炭火力発電はどんなに高効率であっても、天然ガス火力発電の2倍以上のCO2を排出し、温暖化対策の観点からは最も問題です。その石炭を、パリ協定のルールを議論しているCOP23の最中に、さらに推進していく姿勢を発表する日米には強い批判が集まりました。米ホワイトハウスには「特大化石賞」が贈られました。

マイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長は、「石炭を気候サミットで推進することは、タバコを癌サミットで推進するようなものだ」と揶揄したそうです。

 

COPを支える脱炭素イニシアティブ

会議終盤の 11 月 16 日、イギリスとカナダが主導する「脱石炭へ向けたグローバル連盟 (Powering Past Coal Alliance)」の発足が COP23 の会場で発表されました。同連盟は、脱石炭をコミットし、その機運を高めていくためのもので、初めて脱石炭方針を掲げる国・地域の連携が生まれました。現在までに 27 の国と都市が名を連ねています。 同連盟は、宣言で、来年 2018 年のカトヴィツェ会議にはこれを 50 に増やすことを目指すとしています。パリ協定の時代にあって、脱炭素に向けた意欲ある先進国、途上国、自治体が協働するこの連盟は、最も CO2 排出量の多い石炭からの脱却を加速させようとする国際社会のトレンドを示したものと言えます。

ダイベストメントのイニシアティブの動きも活発化しています。 ダイベストメントとは、気候変動の原因である化石燃料に対する投融資を撤収する(投資=インベストメントの逆)という動きです。

大手金融機関の HSBC は、今回のボン会議の開催前に、石炭火力発電事業やその他の CO2を大量に排出する部門に係る金融リスクを低減することを含むグリーン投資の新方針を発表しまし た。また、ボン会議開催中には、ドイツの NGO ウルゲバルトが石炭関連企業のデータベースを公開しました。その中には、日本企業からは、東京電力、関西電力、中部電力、中国電力、電源開発 のほかに、世界で26番目に大きい石炭発電所デベロッパーとされる丸紅も登場しています。これらのダイベストメントの動きの背景には、石炭発電所建設への投資を継続することは、投資を回収できない座礁資産化のリスクを抱える上に、地球平均気温を4℃上昇させる手助けをしてしまうことであるとの認識があります。パリ協定では、資金の流れを低排出にするという目標も掲げられており、今後もますますダイベストメントの取り組みは加速することが予想されます。

気候変動対策の推進にはこうした低炭素イニシアティブが大きな役割を果たしています。主なものを次にリストアップしておきます。

 

  • RE100

事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟するイニシアティブで、「Renewable Energy 100%」の頭文字をとって「RE100」と命名されている。2014年に発足したRE100には、2017年12月7日時点で、世界全体で117社が加盟。

  • SBT

SBTは、「Science-based Targets」の頭文字を取った略称で、日本語では「科学的根拠に基づく目標」。企業に対し「科学的根拠」に基づく「二酸化炭素排出量削減目標」を立てることを求めているイニシアティブ。SBTイニシアティブは、気候変動対策に関する情報開示を推進する機関投資家の連合体であるCDP、国際環境NGOの世界資源研究所(WRI)と世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)によって2014年9月に設立され、この4団体が現在も連携して事務局を務めている。2017年12月14日現在約330社が参加。うち、日本企業が40社。

  • We Mean Business

Climate Week NYC 2014の開催を契機に生まれた企業連合体。「We mean business」は、英語の熟語で「私たちは真剣だ」という意味。Climate Week NYC 2014の会場に集ったアップルなど企業が発起人となり、さらに、BSR、CDP、Ceres、The Climate Group、The Prince of Wales Corporate Leaders Group、WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)、B Teamという気候変動やサステナビリティの分野で力を持つ国際NGOが協働する形で発足。現在世界260社が加盟。「RE100」と「SBTイニシアティブ」の母体団体。

  • カーボンプライシングリーダーシップ連合

効果的なカーボンプライシング政策の設計を目的とした、世界銀行グループの主導による、政府、民間企業、及び民間団体を含む連合体。COP21の開催期間に発足。

  • LCTPi

低炭素技術パートナーシップ・イニシアティブ。2℃⽬標実現に向けて、企業や政策立案者のための共同プラットフォームを提供する。現在、低炭素貨物、再⽣可能エネルギー、炭素吸収、省エネビルディング、セメント、低炭素輸送燃料、農業、森林、化学薬品の9つの技術分野においてプロジェクトが進行中。WBCSDが主導。

  • Climate Action + 100

世界の大規模排出企業上位100社を対象とした機関投資家による気候変動問題への解決に向けた新たな5ヶ年イニシアティブ。企業に対してパリ協定の下での2度目標へのコミットメント、気候変動関連の財務情報公開の強化、気候 変動に関するガバナンス体制の向上を求める。

 

日本の地球温暖化対策の動向

日本では、2016年5月に「地球温暖化対策計画」を閣議決定し、中期目標として2030年度に2013年度比26%削減を掲げるとともに、目指すべき長期的目標として2050年に80%削減を掲げました。これを受けて、中央環境審議会地球環境部会が2017年3月に「長期炭素ビジョン」を発表しています。これは、これまでの技術や制度の延長線上でできることを積み上げていくだけでは、長期目標を達成できないことから、技術のみでなく経済・社会システムやライフスタイルのイノベーションを図ること。また、気候変動対策は経済成長、地方創生、少子高齢社会対策などの我が国の抱える課題の同時解決にも資するものであることなどの提言を含んだ、今後の政索の方向性を示したものです。

一方、「長期炭素ビジョン」発表直後の4月7日に経済産業省が「長期地球温暖化対策プラットフォーム報告書」を発表しました。経済産業省の報告書は、経団連や電力会社などの意向を反映してか、2050年80%削減など国内でのCO2削減には消極的で、むしろ「国際貢献」「グローバル・バリューチェンジ」「イノベーション」の3本の矢で、我が国の排出量を超える地球全体の排出削減に貢献するというゲームチェンジを提案しています。具体的な施策提案を見ても、環境省「長期炭素ビジョン」はCCS(二酸化炭素回収・貯留)付き火力発電とカーボンプライシングに積極的な姿勢を見せているのに対し、経済産業省のほうは、国内火力へのCCS付設やカーボンプライシングには慎重な姿勢を示し、一方、EOR(石油増進回収法)による低炭素原油やCO2フリー水素開発には積極的な姿勢を示しています。

外務省では、COP23の後、12月12日にパリで行われた「気候変動サミット(One Planet Summit)」に河野外務大臣がパネリストとして出席。COP23での議論を踏まえ次のような発言をしています。

  • 気候問題に取り組むためには全ての力を結集する必要がある。日本は資金メカニズムを通じてだけでなく、先進的な技術力とイノベーションの力を気候資金のスケールアップに活用することで世界をリードする。
  • 政府は金融市場、投資家、企業との関係を強化する。日本においては世界最大規模の年金運用基金であるGPIFがESG投資を国内で牽引している。
  • 多くの企業がパリ協定の2℃目標と整合的な目標設定を始めており、Science Based Target を支持。2020年3月末までに100社の認定を目指す。
  • 気候変動に関するビジネスと、科学技術とイノベーションをより創造的に結びつけなければならない。
  1. 日本は水素エネルギー関連技術でも世界をリードする。2020年の東京オリンピックを   水素社会のショーケースとし,2024年のパリオリンピックに向けた持続可能な社会の   実現への道筋を示す。
  2. 燃料電池車を2020年までに約4万台を導入し,また160箇所の水素ステーションの導入   を目指す。また,ブルネイやオーストラリア等と協力して,国際水素サプライチェー   ンの実現に向けた取組を具体化する。
  3. 日本は本年12月23日に気候変動観測衛星「しきさい」を、また温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」を2018年度中に打ち上げる予定。
  • パリ協定と整合的な長期戦略は気候資金の有効なスケールアップに不可欠。日本は新たな 成長につながる長期的な戦略を国内で準備中。

 

エネルギー基本計画の動向に注目

いま、経済産業省総合エネルギー調査会基本政策分科会では、「エネルギー基本計画」の見直しについての議論が進んでいます。

11月28日の会議の配布資料を見る限り、2030年の電源構成は、再エネが22~24%、原子力が22~20%、火力が56%程度という目標値で検討が進んでいるようです。

原子力や火力が高い割合の目標値で設定された場合、再エネ導入の余地がそれだけなくなるというロックイン現象が起きてしまいます。原子力発電や石炭火力発電などのインフラ施設は、一度導入されると長期にわたって放射性廃棄物や二酸化炭素を排出し続けます。

この1月に幅広い国民の意見を募集するためエネ庁のサイトにエネルギー政策に関する「意見箱」(http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/opinion/)が設けられました。ぜひ、経団連や既得権益を持った電力会社やエネルギー関連企業の意向に流されることなく、脱原発・脱炭素の持続可能なエネルギー政索を慎重かつ大胆に検討していただきたいと思います。

(久米谷 弘光)