太陽の光を熱などのエネルギーに変えて使用する調理器“ソーラークッカー”。わが国では1㎡あまりのパラボラ反射鏡を使った集光型、ホットボックスと呼ばれる蓄熱型、アルミフォイルと段ボールを組み合わせた手作りクッカーなど小型で持ち運べるタイプなどが一般的。だが、13億の人口大国インドでは、日本で見かける様々な形をしたポータブルな小型クッカーだけでなく、1日に2万~3万食の調理ができる巨大なソーラークッキングシステムが開発され、給食産業をはじめ病院や自治体などで注目されている。ここでは、この大規模なソーラークッキングシステムの概要について紹介する。

 

毎日2万食以上を調理するソーラークッキングシステム 

この1月、インドの商業都市アフメダーバードの南東約100kmにあるVadodaraでソーラークッキングの世界大会(主催者:ソーラークッキング・インターナショナル)が開かれた。会場を提供したのはMuni Seva Ashramという慈善団体。この施設の一角にある多数の楕円形をしたパラボラ反射鏡が目を引く。Scheffler Dish型集光システムという太陽エネルギーを効率よく集める蒸気発生システムの主要機器である。この蒸気は、この団体で働く職員と養育施設やがん入院患者向けに毎日300人分以上の食事の調理用と施設の空調用エネルギーとして使われている。

写真1 Muni Seva AshramのScheffler Dish型集光システムの反射鏡(左)と集熱器 (3)

写真1 Muni Seva AshramのScheffler Dish型集光システムの反射鏡(右)と集熱部(左)

また、世界大会の参加者の多くがテクニカルツアーで訪問した先にTapi Food Productsというフルーツ加工で急成長を続けている企業がある。4階建て本社工場の屋上にもScheffler Dish型集光システムが設置され、蒸気は原料のくだものの乾燥、ゼリーやグミへの加工、ジュースなど飲料製品の殺菌用などに使われる。

写真2 屋上に大きなパラボラ反射集熱器が見えるTAPI Foodの本社

写真2 屋上に集光システムの一部が見えるTapi Food Products社

この集光システムを使ったソーラークッキングシステムで世界最大規模といわれる設備がインド・ラジャスタン州のAbu山麓Teleti村という標高1200mの高地にある。受光面積が9.2㎡のScheffler Dish型集光システム84台で約650℃の蒸気を作り200~400リットルの鍋で1日平均20,000食を調理しているが、日射条件が最も良い夏場には1日38,500食を調理したという記録がある。

写真3 二重底構造をした蒸気鍋

写真3 二重底構造をした調理用蒸気鍋

このScheffler Dish型集光システムは、ドイツのエンジニア・W.Scheffler氏の集光原理に基づいてインドの実業家Deepak Gadhia氏が2000年代初頭に実用化したもの。その集光・集熱の概念を図1に示す。

金属フレームをパラボラ状に加工し、多数の小さな鏡をこのフレームに組み付けて反射鏡とし、その焦点に太鼓型集熱部を置く。システムを構成する複数台の反射鏡には、焦点が集熱部に向くようなコントロールするワイヤーで繋がれている。特長は、安価な材料で容易に組み立てられ100~650℃のスチームが低コストで得られること。

すでに病院や軍隊などなど数十から千人クラスの中・大規模ソーラークッキングシステムをはじめ、空調や大量の熱エネルギーを必要とする工場などの産業用としても利用が始まっている。さらには太陽熱発電システム用など広い用途が期待され、日射量が豊富な中東やアフリカ地域への輸出商品としても期待されている。

図1 Scheffler Dish型集光システムの概念図。出典:インド政府のホームページより

図1 Scheffler Dish型集光システムの概念図。出典:インド政府のホームページより転載。

 

4,800人の中学生がソーラークッカーを手づくり

晴れ日が年間300~330日と日照条件に恵まれているインドでは、政府もエネルギー・環境政策や、調理用燃料費負担の軽減策としてソーラークッカーに補助など助成をしてきた。ソーラークッカーの普及は、政府資料による310万台から大手ネット販売業者の1,000万台と立場によって大きな差がある。この差はソーラークッカー特有の商品形態、すなわち、ここに紹介した大規模な調理システムからアルミフォイルとダンボ-ルを組み合わせた小さな手作り品までの多種・多様な型式にあるようだ。数値として把握が難しいが膨大な量が使われていると推定される手作りクッカーのイベントについても紹介しておこう。

今年2月、ムンバイ郊外のBhayanderで開催されたソーラークッキング大会には59校から7,438人の中学生が参加し、自作したソーラークッカーでヌードルを作り楽しんだというニュースが配信された。だが、世界記録書として知られるギネスブックの公式記録は昨年、同じインド・オーランガバードでの4,780人で、Bhayander大会は記録として認定されていない。

 

インドには多種・多様なソーラークッカーが・・・・

ここで紹介したScheffler Dish集光システムと手作りソーラークッカーでは、規模だけでなく性能や対応できる料理など大きくことなる。そこでインドで実際に使われているソーラークッカーについて紹介しよう。

集光型:反射型:最も一般的なものとしてパラボラ型反射鏡で光を集めるタイプで、Scheffjer Dishシステムも手作りともにこのタイプ。

透過型:凸レンズまたはフレネルレンズで光を集めるタイプ。

非集光型:断熱性のボックスにガラスや透明プラスティックを張ったホットボックス(温箱)タイプ。農・海産物の乾燥用から発展し、手作りタイプからメーカー製品まで愛好者が多い。

インド政府のホームページ(http://mnre.gov.in)では、調理する場所、すなわちScheffler Dishシステムのように調理場所が屋内の厨房か、数人分までを料理を屋外で調理するポータブルタイプにわけ性能など概要を紹介している。

 

(取材・記事: 自然エネルギージャーナリスト 蒲谷昌生)