固定価格買取制度で太陽光発電に注目が集まっているが、熱を熱として利用する太陽熱利用のほうがエネルギー変換効率は高く、普及が期待される。太陽熱温水器は1980年代に普及が進んだが、強引な販売手法やメンテナンスなどが問題になり、その後普及は停滞している。

太陽熱利用機器販売台数推移
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※ソーラーシステムは、自主統計による設置台数。
※太陽熱温水器は経済産業省「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計」からの販売台数。
出典:一般社団法人ソーラーシステム振興協会

しかし、ここに来て強力な太陽熱利用の推進役が登場した。東京ガスなどのガス会社だ。家庭のお湯まわりのエキスパートであるガス会社が太陽熱温水器の普及に参画することは画期的で心強い。東京ガスの太陽熱利用ガス温水システムSOLAMO<ソラモ>について取材した。

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取材にご協力いただいた東京ガス営業第一事業部集合営業支援グループの杉村友希さん

2010年にバルコニー設置型を発売
東京ガスは、2010年2月、マンションのバルコニーに手すりと一体になった太陽熱集熱パネルと高効率のガス給湯器を組み合わせた「SOLAMO<ソラモ>」を発売した。太陽熱で沸かしたお湯をキッチン、洗面所、風呂はもちろん床暖房にも利用できる。曇りや雨の日はガス給湯器がバックアップするので、お湯が不足する心配はない。

現在、「SOLAMO<ソラモ>」のシステムは新築集合住宅向けのバルコニー設置型と屋上設置型、戸建住宅向けの給湯器一体型と後付型が用意されている。後付型は現在使用しているガス給湯器をそのまま活かして、近くに貯湯ユニットと集熱ユニットを設置するもので、導入コストが抑えられる。残念ながら集合住宅へは新築向け給湯器一体型のみで、後付型は用意されていない。
2013年末までに約1,700システムの設置実績があるという。

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バルコニー設置型と屋根設置型の集熱パネル
 (画像提供:東京ガス㈱)

「エコジョーズ」との組み合わせで便利な省エネ機能を実現
基本的なシステムは、バルコニーや屋根に設置した集熱ユニットで太陽熱を吸収、その熱で貯湯タンクの水を温めてお湯にし、給湯や風呂、暖房などに利用する。

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SOLAMO<ソラモ>のシステム概念図
(※機種により仕組みに違いがあります。 画像提供:東京ガス㈱)

エネルギー変換効率は、太陽光発電の15~20%台に対して、太陽熱利用は40~50%と高い。太陽光発電は標準的な家庭で約20㎡の屋根面積が必要であるのに対して、太陽熱温水システムは4㎡の敷設面積で足りる。好天に恵まれれば太陽熱だけで貯湯タンク内の温水の温度は60℃以上に達するという。

さらに「SOLAMO<ソラモ>」は、高効率給湯器「エコジョーズ」と組み合わせていることで、便利で省エネに貢献する機能を実現している。
太陽熱で温めたお湯をお好みの温度に調整する機能やお風呂の追い炊き機能、そして浴槽の残り湯の熱を貯湯タンクに回収し、貯湯タンク内の水を温める機能も備えている。リモコン(太陽熱モニター)で省エネ効果を「見える化」し、さらなる省エネ行動を促進する効果もあるという。
バルコニー設置型は屋根との落差がないため、太陽電池で駆動する集熱循環ポンプも備えている。

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バルコニー設置型の「SOLAMO<ソラモ>」本体はスリム設計
(画像提供:東京ガス)

ガス代もCO2も約30%削減
「SOLAMO<ソラモ>」の導入効果としては、ガス代もCO2の排出量も約30%削減、
年間で約2.7万円※1のガス代の節約になる。 
季節によって異なる太陽熱だが、意外に冬場の集熱効果も高い。特にバルコニーに垂直に設置する集熱ユニットの場合は太陽光の入射角度が冬場のほうが最適になり、太陽熱で給湯器の入水温度を高くすることで、ガス代の大幅な節約につながるのだ。

ところで気になるお値段だが、正直言ってまだ高い。税抜本体価格で既存の戸建住宅向け給湯器一体型の貯湯ユニットは65万円、集熱ユニットが2㎡×2枚の4㎡で15万2,000円、リモコンセットが3万7,000円、合計83万9,000円である。
今お使いの給湯器に接続する後付型の場合は、貯湯ユニットは25万円、集熱ユニットが2㎡×2枚の4㎡で15万2,000円、太陽熱モニター(オプション)が2万5,000円、合計42万9,000円である。

ただし、東京都は新築住宅につける太陽熱利用システムに係る経費の半分を事業者に補助する制度を設けているなど、多くの自治体で独自の太陽熱普及に向けた補助制度を設けている。それを利用することができれば、導入コストはかなり抑えられる可能性がある。

導入コスト低下とさらなる再生可能エネルギー活用普及戦略に期待
普及を促進するためには、導入効果が年間のガス代約3万円の節約だとするならば、ぜひ10年以内で導入コストを回収できるよう、30万円以下のシステム価格をめざしてもらいたい。また、屋根がなくて太陽光発電などが利用しにくいマンション向けのバルコニー設置型の後付タイプの開発も期待したいところだ。

「SOLAMO<ソラモ>」開発の背景には、再生可能エネルギーへの関心の高まりがある。東京ガスなどガス会社にとって「SOLAMO<ソラモ>」は、太陽熱利用の分、ガスの売上が減少する。しかし、高効率給湯器の「エコジョーズ」は主力商品であり、太陽熱という再生可能エネルギーを自社商品に組み込むという企業戦略的な意義は大きいという。
確かに、天然ガスは温室効果ガスの排出が相対的に低いと言われるが、所詮は枯渇性の資源である。長期的にはガス会社もまた再生可能エネルギーへシフトしなければならない。家庭のお湯、熱まわりの商品・サービスを提供するガス会社として、どのような再生可能エネルギーの活用を提案していただけるか、「SOLAMO<ソラモ>」の普及戦略とともに今後の展開が楽しみである。

※1
従来型熱源機との比較、家族3人、80m2集合住宅(RC構造)、集合住宅向けバルコニー
設置型を南向きに設置した場合の当社試算例。年間負荷は給湯15.6GJ、風呂保温1.7GJ
床暖房8.1GJ。ガス料金は家庭用ガス温水床暖房契約エコ割(東京地区等)の平成26年
4月時点の平均原料価格に基づく、基本料金・税込金額。但し、ご使用量によりおトク額
は異なります。

参考URL
東京ガス太陽熱利用ガス温水システムSOLAMO<ソラモ>
http://home.tokyo-gas.co.jp/living/solamo/index.html
一般社団法人ソーラーシステム振興協会
http://www.ssda.or.jp/
東京都環境局「熱は熱で、太陽熱で」
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/energy/renewable_energy/ne2.html
(取材・記事: 久米谷 弘光)