気候変動や原発事故を受けて、WWFをはじめ国内外のNGOや研究機関が、化石燃料や原子力に頼らず自然エネルギー(再生可能エネルギー)で100%供給が可能というエネルギーシナリオを発表している。一方、日本政府のエネルギー基本計画では、民主党政権が掲げた「原発ゼロ」を転換し、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けている。

さて、国民は将来のエネルギーについてどのような希望を持っているのだろう。

ノルド社会環境研究所は全国の20歳以上の男女個人を対象に「2050年のエネルギー」に関してWebアンケート調査を行った結果を発表した。調査時期は2014年3月17日~30日、有効回収は709サンプルである。

まず、将来(2050年頃)の望ましいエネルギー構成として最も多いのは「自然エネルギーを基本に一部をCO2排出の少ない化石燃料で供給」で43%である。「100%自然エネルギーで供給」は17%で2割に満たない。一方、「化石燃料を基本にして供給」は2%、「原子力を基本に供給」は6%に過ぎない。

「100%自然エネルギーで供給」と「自然エネルギーを基本に一部をCO2排出の少ない化石燃料で供給」「自然エネルギーを基本に一部を化石燃料と原子力で供給」「自然エネルギーを基本に一部原子力で供給」を合わせると、2050年頃のエネルギー構成は「自然エネルギーを基本とすべき」と考えている人が9割以上を占める。

図1 2050年の望ましいエネルギー構成

図表5

次に、将来(2050年頃)の日本において国内の自然エネルギーだけで100%自給できるかを尋ねたところ、「100%自給できる」と回答した人はやはり17%。「100%は無理でも8割くらいは自給できる」という人32%を合わせると、約半数の人が2050年頃までに8割以上自然エネルギーで自給できると考えている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の指摘では、地球温暖化による深刻な影響を回避するためには、日本は少なくとも2050年までに8割以上の温室効果ガスの削減が必要とされている。自然エネルギー自給によってこの目標を達成できるという希望をもっている人は約半数ということになる。

図2 2050年の自然エネルギーでの自給可能性

図表7
 

ところで、原子力発電の再稼働については、国民はどう考えているのだろう。

同調査によると、「再稼働させずこのまま原発ゼロにしたほうがよい」(41%)という“即時ゼロ派”よりも、「安全性を確認できたものは稼働させるが新設はせず徐々に廃止すべき」(48%)と「安全性を確認できたものは稼働させ新設もしていくべき」(11%)を合わせた“再稼働派”が多くなっている。

一方で、このまま原発ゼロと徐々に廃止を合わせた「原発は廃止すべき」という人は9割近くを占める結果となっている。

当面、安全性を確認できたものは再稼働を容認するが、将来的には原発はゼロにすべきというのが現在の世論の大勢のようである。

図3 原子力発電所の再稼働について

図表6
 

国際エネルギー機関(IEA)はすでに2005年に石油生産のピーク(ピークオイル)は過ぎていると発表している。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は温室効果ガスの早期の削減が必要と強く訴えている。政府や原子力規制委員会が第一優先で再稼働を検討している川内原発では、巨体噴火のリスクが指摘され、至近距離の活断層も発見されている。

化石燃料も原子力もだめとなれば、再生可能な自然エネルギーの開発を早く進めるべきことは明白である。国内需要は自然エネルギーで100%自給できる科学技術的な条件はすでに整っている。あとは積極的に推進する国民的な意志の問題である。8割以上のエネルギーを自然エネルギーで自給できると確信し、推進する日本人を増やさなければならない。その日本人の意志が日本のそして世界の持続可能性を高めることになる。

石油事情を見ても、気候変動の進行を見ても、自然エネルギー開発はできるだけ早く進めなければならない。原発については、再稼働させなければ放射性廃棄物の増加は止まるが、稼働していなければ原発は安全ということにはならない。使用済み核燃料は脆弱なプールに大量に保管されており、大地震やテロによる深刻な原発事故の脅威は続いている。廃炉や使用済み燃料など高レベル放射性廃棄物の処分ができなければ、真の“脱原発”とはならない。

石油価格が暴騰しないうちに、気候変動が深刻化しないうちに、そして日本経済財政が破綻しないうちに自然エネルギーの開発や原発の廃炉・放射性廃棄物の処分を済ませなければならない。短期的な電力会社の経営や政治的な権益維持のために遠回りしている場合ではない。

2020年の東京五輪には、2050年自然エネルギーで100%自給、原発の廃炉と放射性廃棄物処分の見通しを日本のビジョンとして示して、世界の人々を迎えたい。

(久米谷弘光)