2014年2月18日(火)に「アズワンコミュニティ鈴鹿」を視察しました。

「アズワンコミュニティ鈴鹿」は、鈴鹿サーキットで有名な三重県鈴鹿市を舞台に、誰もが人間らしく暮らせる今までにない新しい「やさしい社会づくり」を目指している地域コミュニティです。

人が本当に暮らしやすいと思う社会とはどのようなものなのでしょうか。ここアズワンコミュニティでは、規模は小さくとも義務や責任、ルールに縛られず、「怒りや争いのない、家族のような親しさで安心して暮らせる」社会の実現を目指して、2000年から地域で暮らしながら、さまざまな取組みに挑戦し失敗を繰り返しながら、人と社会を基盤とした研究を積み重ねてきています。

今回の視察では、アズワンコミュニティの中にあるNPO法人サイエンズ研究所の宮地昌幸さんと坂井和貴さんにご案内いただきました。

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坂井和貴さん(左)、宮地昌幸さん(右)、中央は記者大柴

 

≪視察場所≫

○鈴鹿市におけるアズワンコミュニティの舞台

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○視察した場所は、次の8か所。

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①サイエンズ研究所とサイエンズスクール鈴鹿

「アズワンコミュニティ鈴鹿」を支えているのが、研究機関である「NPO法人サイエンズ研究所」と教育研修機関である「NPO法人サイエンズスクール鈴鹿」です。

元々、三重県鈴鹿市において「PIESSネットワーク」(Peace , International of , Eco-sound and , Society based on , ‘SCIENZ’)という「誰もが豊かに安心して暮らせる社会」を作ろうとする趣旨に賛同する人たちが集い、組織運営や経営経済、家庭生活、人間関係などの課題に取り組み、試行錯誤を繰り返しながら「やさしい社会」づくりの試みが行われていました。そこから「アズワンコミュニティ鈴鹿」が生まれ、また、人としての成長をサポートする「NPO法人サイエンズスクール鈴鹿」が生まれ、そしてこれらの活動を通して、人間や社会について根本的に研究する機関の必要性から「NPO法人サイエンズ研究所」が発足されました。

サイエンズ研究所では、サイエンズスクール鈴鹿やアズワンコミュニティ鈴鹿での活動自体とその活動で起きている事象などを題材としてさまざまな研究がおこなわれています。一方で、研究所で研究されていることがサイエンズスクール鈴鹿やアズワンコミュニティ鈴鹿に還元され、新たな活動へつながっていきます。

この3つが連動していることで、この地域に暮らす人の社会や環境に対する個人個人の意識が高くなり、強いコミュニティが形成される仕組みとなっていると感じました。

サイエンズスクール鈴鹿は、自分自身のことや人生、社会について根本から知り、自分に最も適した生き方を見出す研修機会を提供しており、以下の7つのコースが用意されています。また、サイエンズスクールの合宿コースに参加後、趣旨に賛同し、継続的にサイエンズスクールを活用しながら、自分自身を調べようとする人たちが、互いに交流を図りながら歩んでいこうとする方は会員となることもできます。2013年12月現在会員数は海外在住も含めて120名となっています。

※「サイエンズ」とは、「Scientific Investigation of Essential Nature(科学的 本質の探究)」の頭文字SCIENとZero(零、無、空・・・)のZによるもの。

1)マイライフセミナー

2)ベーシックコース_内観コース

3)ベーシックコース_自分を知るためのコース

4)ベーシックコース_自分を見るためのコース

5)アドバンスドコース_人生を知るためのコース

6)アドバンスドコース_人を聴くためのコース

7)アドバンスドコース_社会を知るためのコース

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サイエンズスクールの各種コース

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アズワンコミュニティとサイエンズ研究所、サイエンズスクールとの関係
図:アズワンコミュニティ ホームページより http://as-one.main.jp/

 

②アズワンコミュニティの玄関口「鈴鹿カルチャーステーション」

続いて、鈴鹿カルチャーステーションを訪れました。ここは、アズワンコミュニティの中のさまざまなコミュニティ・ビジネスが結集している場所です。「アズワンコミュニティ鈴鹿」や「サイエンズスクール鈴鹿」の事務所スペースの他、「トランジション・タウン鈴鹿」や「循環共生社会システム研究所」、その他の鈴鹿の街で活動している団体がミーティングやセミナーなどを開催するためのレンタルルームが設けられています。

また、次の3つの機能を持ちながら、新しい社会づくりをおこなう拠点として位置づけられています。

1)街の縁側コミュニティステーション

「カフェ サンスーシ」というコミュニティカフェのほか、アートギャラリーとして絵画を展示したり、演奏ホールとして活用するなど、芸術家たちの活躍の場にもなっています。また、茶室も整備されておりお茶会も開かれています。

2)街の学び舎カルチャーステーション

「0歳から入れる 愉快な音楽会」や、「わらべうた遊びの会」、「のびのびお絵かきくらぶ」、「のびのび英語」、「和太鼓塾」、「子ども文化の祭典」、「てっらこや学習塾」、「茶道教室」といった子どもが学べる企画を数多く開催しています。また、「宮沢賢治を読もう」、「二宮金次郎の人づくり 人育て」といった大人も学べる機会も提供している場となっています。

3)街のチャレンジエコステーション

「エコライフチャレンジセミナー」という循環型社会を目指すためのセミナーや、市民が参加してエコロジカルな生活を考えるワールドカフェなどが開催されています。

街のだれでもが好きな時に寄れる憩いの場所であり、かつ大人も子供も学ぶ学び舎づくりが日々進行している場所であると同時に、我々も目指している“エコ・コミュニティ”づくりの拠点にもなるのではないかと思いました。

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③地域に根差した農場「SUZUKA FARM」

次に、「SUZUKA FARM」という農場を見学しました。2010年当初、20代~30代の若者5~6人によってアズワンファーム株式会社が設立されていましたが、2012年にSUZUKA FARM株式会社として新たにスタートしています。面積は約5,000坪(1.5町)で、お米、じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、白菜、キュウリ、トマト、ピーマン、ナス、オクラ、カボチャ、とうもろこし、大根などの作物を作っています。

また、「地域の人のための、地域に根ざした農業」というコンセプトのもと、「街のはたけ公園」という子供たちの農業体験の企画を開催したり、収穫したお米や野菜が「おふくろさん弁当」というお弁当屋さんの食材として使われているなど、コミュニティづくりを率先して進めています。

見た目はただの農場で、子供たちの農業体験なども現在では多くの場所で行われています。その多くは、耕作放棄地が荒れているので、それを利用した地域活性化を目指したものだと思いますが、ここは雰囲気が違います。

「農業を通じて“食”という文化を根底から見直すような取り組みをおこなうことで、人の心理にどのような影響を与えるのか。本当に人間らしく生きられる社会づくりがどのようなものなのかという追求し、まったく新しい社会づくりを農業方面からできることを行おうと試みています。」と、社員の方はおっしゃっています。「本当の人間らしさを追求する」という共通意識のもと、作物を育てながら、ごく自然とコミュニティも充実していることが感じられるところでした。

農場にマッチしたコンポストトイレも設置されています。またウォシュレット付きと珍しい。

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④なんでも相談所「アズワン コミュニティ ライフ オフィス」

コミュニティ・ビジネスの一環である「アズワン コミュニティ ライフ オフィス」は、鈴鹿カルチャーステーション内にあります。

ここは、一番最近できた仕組みで、何でも気兼ねなく相談や頼みごとができる相談窓口。「家族のような間柄」で一緒にお話をすることでその人の心が豊かでいられるような仕組みを展開しています。

 

⑤そのまま持っていくお店「コミュニティ ライフ ストア」

「コミュニティ ライフ オフィス」のお店として「コミュニティ ライフ ストア」というお店があります。ここでは、アズワンコミュニティ内にある「SUZUKA FARM」で収穫した野菜や「おふくろさん弁当」の御惣菜などが並べられ、来店した人は“無料”で持ち帰ることができるお店でした。

以前は、1日に2回(午前は11:00~13:00、午後は15:30~17:30)開店し、アズワンコミュニティのメンバーが利用していました。メンバーといっても会員制ではないので、アズワンコミュニティに関わる人たちがこのストアに来ては自由に制限なく食材やお弁当を持って帰っていました。

一般的にお店とは、ギブアンドテイクによって成立します。つまり通貨が介在して成立するものですが、ここではギブアンドテイクを目的としないお店が運営されていました。

ここも以前は、地域通貨RINKAによって商品を購入できる「RINKAショップ」というお店でした。しかし、『地域通貨によるギブアンドテイクの世界から、「食物を育て、その育った実が口を開ければ自然と落ちて食べられる」、という考えのもと、“報酬を求めない”という今までにない社会づくりを目指す方向へシフト』し、『それこそが、本当のここでのコミュニティの目的である』と当ストアの運営者にお話いただきました。

残念ながら、私が視察へ行った時は閉店していましたが、その閉店した理由も、『「SUZUKA FARM」や「おふくろさん弁当」の健全な経営の在り方を再検討するため』と話し、業績にとらわれず本来のコミュニティの目的に合わせた健全なあり方を再確認したいというポジティブな考えでいることに驚きました。

今後、「コミュニティ ライフ ストア」がどのように復活するのか楽しみです。

※先日、このコミュニティ ライフ ストアが復活したとの案内をいただきました。

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⑥働き方は自分で決める「おふくろさん弁当」

おふくろさん弁当は、「SUZUKA FARM」で育てたお米や野菜を使ったお弁当屋さんです。また、配達を行っており、現在では鈴鹿市だけでなく、周辺の津市や四日市市までエリアが広がり1日1,000食以上を生産しています。

ここのユニークな点は、従業員が会社や仕事に縛られないで自由に楽しく働きやすい会社を作っていることです。給料や休暇、出勤形態は会社が決めるのではなく、その人にとって暮らしやすい働き方を会社と話し合って決めています。「決まり事が増えることで人は窮屈に感じ、ミスをするとその人を責めてしまう。そのような環境で仕事をすることが、本当に人にとって良いのか、という思いから始めた」と社長からお話をいただきました。

また、「これまでは実践中心で行ってきたため、今後は研究を重ねながらより良い商品を提供していきたい。現在は閉店しているコミュニティ ライフ ストアが活発になるためにも、おふくろさん弁当が今よりも大きくならないといけない。」と意気込みをお話しくださいました。

本当の人間らしい働き方とは何かを追求・実践し、地域のコミュニティづくりにも還元する大きな役割を果たしていることが感じられました。

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⑦炭づくりの後継者も生まれる「すずかの里山」

すずかの里山は、アズワンコミュニティの一番西に位置する丘陵地の一角を舞台として、里山づくり体験ができる場となっています。

里山が大好きな人達が集い、雑木林だった場所を3年かけて整備し、周辺の地域の子供からシニアまでが楽しめる場としてさまざまなワークショップが開催されています。

今では、炭窯を自分たちでつくり、炭づくり体験をおこなっています。炭づくりを生業としてきた方の後継者の問題もありましたが、ここではアズワンコミュニティを通して受け継げられつつあります。「地域の皆で里山を管理していくことで土地が再生した。自分も炭窯づくりを覚え、次の世代へ受け継ぐことが自分たちの使命」と「すずかの里山」の運営者は語ってくれました。

子供たちがこの地で里山について学び、体験を通じて里山が再生し文化が継承されていく、そんな持続的な社会が展開されている場所であると感じました。

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■視察をしての感想

「アズワンコミュニティ鈴鹿に行ってきます。」と伝えた時に、それはどんなコミュニティなのかと問われました。視察する以前は、アズワンコミュニティという一定エリアのコミュニティが存在するものだと思っていました。しかし、視察してみるとコミュニティの境界はなく、見た目はただの街であることに気が付きます。

街のいたるところがアズワンコミュニティの舞台となり、農業、里山保全、お弁当屋さん、なんでも相談所といった活動がおこなわれていました。さらに、今回視察したこと以外にも多くの活動が行われており、コミュニティの範囲を限定しない、広がりを感じました。

ただし、さまざまなコミュニティづくりが行われていても、「本当の人間らしさとは何か」という本質を追求している点は共通しているため、一つの大きなコミュニティとしても見えました。

本当の人間らしい暮らしとは何かを追求することは、これからの社会のあり方を考える上では欠かせません。今の大量のエネルギーや資源に依存した社会での暮らしが本当に人間らしい暮らしなのか、お金で全て解決することが人間らしいことなのか、根底にある人間らしい暮らしについて皆が考えることが、エココミュニティをつくる社会の原点なのではないかと考えさせられた視察となりました。

興味を持った方は、一度訪問されてはいかがでしょうか。

視察の最後は、「コミュニティ食堂 ふぁみーゆ・Suzuka」で美味しい夕飯をごちそうになりました。

アズワンコミュニティのみなさま、ありがとうございました。

懇親会の様子

懇親会の様子

 (取材・記事:大柴研太)